白洲信哉 SHIRASU SHINYA OFFICIAL WEBSITE


平成22年11月30日(火)

 黒森庵
 新蕎麦

 ちょっと食べ過ぎだ。

 でも蕎麦とか寿司とか好きなものは「いい」とやたらと食べるから困まったものだ。25日は永福町の「黒森庵」主人の加東さんと十何年ぶりの再開。こんな言いかたをするのは僭越だが、非常に「感覚」がいい人だと思っている。お会いしたのはたった二度だけど、最初に出張で総理公邸に蕎麦打ちに来て貰ったとき、蕎麦の味は勿論、姿が素敵なのです。何度会っても感じない人は感じないし、そんな「直感」のようなものを大事に僕はしている。やはりいろいろやっていて、正当なものからイタリー風の変化球まで。味とかそういうことではなく「感覚」が悪い人というのは、高級な食材とか道具とか誰それがお客だとか、詰らないことをペラペラしゃべる。いい食材をつかってかっこいい感じのもりつけして、箸にも棒にもひっかからない店はごまんとある。(まあ味は個人的なことだからあまり意味のあることじゃない)新作もなかなかだったし、なにより家族全体で店を支えていることが凄い。長男のかたは高校に行っていないということだったけど、学校に行くとか行かないとかそんなこと問題じゃないね。いい大学に行くことが大事なことと思っている親が多過ぎるね。道を極めること、その道を見つけることのほうがずっとずっと大切だ。もう崩壊している「システム」に「当然」と思ってなにも考えず惰性でするのはやめよう。そのもっとも酷いのが国権の最高機関なのだからね。各自の自覚、それしかない。

 金曜日は四谷の「寿司匠」に。あまり僕は店の新規開拓しないけど、握りをつまみに酒が飲める店はここだけじゃないかな?酒飲みのつぼを良く心得ているし、寿司はシャリが大事ということを実践している。もうつまみに刺身を適当に切って、いい値段をとる寿司屋には行けないね。あれは怠慢だよ、とここに行って気付かせられた。紹介してくれたのは斎藤順一、新天地で頑張っているようだが、元気にしているかな?

 そして長崎、九十九島で牡蠣を食べてきた。マルモ水産の末竹さん。牡蠣を愛していますね。長年牡蠣に対する疑問が吹き飛んだ。ここの牡蠣は小ぶりですが、僕は気に入りました。フランスで食べた丸い牡蠣、あれに近い。酒井さんの策略で朝ご飯を食べて行ったのであまり食べれなかったのが残念。今度送ってもらい牡蠣シャブにしてみたい。口木さん、お世話になりました。興味がある人はポストに掲載予定です。キリンさんからCMがはいって、急遽連載内容が変更されたけど、食いしん坊にはたまらない。黒島もよさそうだ。


 九十九島の
 牡蠣


 長崎
 九十九島





平成22年11月29日(月)
週刊ポストに《白洲信哉 旨し国、日本 第4回〜土鍋で焼く伊賀牛〜》と《古都逍遥 庭園に遊ぶ 第68回「南禅寺天授庵」ゲスト:村山由佳さん》が掲載されました(「ニッポンの神仏」は休載です)。





平成22年11月23日(火)
 勤労感謝の日、なんという空虚な名であろうか。新嘗祭だとなんでいかんのか。もうそうした戦時中を過度に隠すかのような精神を引きずるのはよしませんか。これは大事な祭りごと。右翼とか軍国主義とかそんなレベルの会話ではないのではないだろうか。陛下がどんな宮中祭祀を行っているか、それを知ることがすなわち国を大事にすること、誇りをもつことに繋がることだと思う。未来永劫 続けていかなければならない伝統であるし、宮中祭祀を疎かに考えること、すなわち日本がなくなることだ。願わくは宮中そのものが京都に遷ること。

 昨日は吉野金峯山寺の田中利典さんと般若湯を酌み交わす。「近代との戦い」を誓って握手してわかれた。弟子の伊藤さん、ご馳走さまでした。平井、という小松菜の地に山伏の道場が隠れていました。12月9日までご本尊のご開帳です。週末は八千人が参拝されたそうです。物凄いことですね。

 日曜日は横浜美術館のドガ展。唐津の三宝所蔵の久保惣にあんな扇面があるんですね。オルセーの改修工事に伴った安易な企画展だと思っていたら、大変充実したいい展覧会でした。やっぱりパステルはいい。月曜は三菱一号館のカンデインスキー展。はじめていった美術館でしたが、画をみるには適した会場です。ムルナウに行ってみたくなる。ヤウレンスキーの夏の夕べが欲しい。34の山もよかった。色使いで有名だけどそんな単純なことじゃない。企画展の出品に規定より大きなサイズに断られると「そんな規制がある団体はやめる」と脱退する。なにかを残す人はうちに激しいものがあるようだ。

 そうそう、土曜はその吉野の修験の写真を撮っている六田さんの個展(丸の内ギャラリー)にも行く。来月12日までです。正に芸術の晩秋ですね。今日は星さんに招待券をもらったイサムノグチの母の映画をみる。このかたも激しい人だ。イサムノグチの新たなものがみえてくる。大人が才能を摘んじゃ駄目だね。明日は加藤さんの新蕎麦を食べに行く。17年ぶりの再会。そのときは総理公邸のパーテイに蕎麦を打ちに来てくださった。今年は茂木の蕎麦粉の出来がいいというので今から楽しみである。





平成22年11月16日(火)

 ご飯の上に
 きしめんが…

 凄まじい晩だった。日々多様性の美徳について思っているけど、こんなにも「有り得ない」ことがおきるとはいまでも信じられない。夕方、JR東海の宮澤さん、名倉さんとマリオットのロビーで待ち合わせる。余談だが、ホテルの部屋からの景色が素晴らしい。西向きだと鈴鹿連峰から伊吹山まで見渡せる。とくにいいのは、バスルームに窓があって伊吹を目の前にして風呂に入れる。昨日京都で入ったばかりなのに、眺望につられてゆっくりつかった。

 さて、車で「楽」へ。部屋には先客がいた。大島さんである。細川政権以来、17、8年ぶりの再会だ。名倉さん、本当にありがとうございました。当時政治部の記者だった彼、いまは人事部だそうだ。すっきりとした風貌、その頃と重ね合わせると「更正しましたね」と思わず口にした。かれは苦笑い。同窓会のような晩に花をそえたのが鳥鍋だった。鳥鍋、といっても普通の鍋じゃない。老獪の仲居さんが登場し、「黙ってみていないさい」という手つきで、八丁味噌をどっさり投入した。「そんなにいれて」と心の中で叫ぶ。「なんで西へいくとかしわ、というんですか?」「八丁味噌、八丁は?」。老舗の女将さん?は手を休めず的確に答えるうちに、鍋がいい感じになってくる。でも真っ黒だ。すると、「見た目よりはあっさりしていますから」と三度言う。確かにその通りだが、ネギと鳥の違いは食感だけで、口の中が同じような「味」に支配されてくる。それも強烈。ん〜とうなっていると八十年近く使っている鉄の鍋にご飯が入れられた。雑炊か?と思っているとそこにきしめんが追加され、なんとご飯の上にきしめんが乗せられる。

 宮澤さんと大島さんは「やっぱりこれだよね」と納得してそれを口に運ぶが、僕はあまりのことに「ご飯ときしめんですよ」と叫ぶ。前出の仲居さんは「この人なにがおかしいのか?」という目つきで睨む。でもこれはショックなことですよ。初八丁味噌鍋、日本の食の多様性はこの後も続く。

 二軒目。僕の様子にいたずら心がわいたのか、宮澤さんは「あんかけスパゲッテイ四つ」と言う。「あ ん か け」なんだ一体。しばらく経つと確かに「あんかけ」というしかないものが出された。それを「これは上品すぎる」とかいう声がかかる。「そういう問題じゃないだろう」とまた心の叫び。

 味噌カツ、あずきトースト、あとなんだったか?いろいろ言っていたけどまだまだあるようだ。帰り際に「次回は味噌カツを」と真面目な顔で言う宮澤さん。何事も経験というけれどこれは修行に近いものである。


 あんかけ
 スパゲティー





平成22年11月15日(月)
週刊ポストに《白洲信哉 旨し国、日本 第3回〜鱧と松茸〜》が掲載されました(「ニッポンの神仏」は休載です)。





平成22年11月15日(月)

 白洲次郎ボトル
 なかなかいい出来です。
 問い合わせはバー無垢

 吉野 金峯山寺の特別拝観にお参りすることができた。大きいとは聞いていたがこれほど迫力あるとは思わなかった。蔵王権現の青色、これも生々しい。日本の生まれた仏像だから異色なのかもしれないが、在来の仏像に宣戦布告しているようだ。いやいや驚いた。来月9日までです。いそげー。

 吉野の地は明治の廃仏毀釈で大きな損害を受けたが、日曜とは言えこれほどの参拝客、桜の時期しか賑わいをみせないとは過去となるであろう。それはすなわち修験の復活のスタートライン、大変喜ばしいこと。明治の修験道禁止令、当時人口3500万人のうち、17万人が山から追われたと、はじめてお目にかかった金峯山寺の執行長・田中利典氏が書かれている。いつの世も国家の横暴には目があてられない。せっかくいいご縁を頂いたので今後しっかり勉強していきたい。今の世直しの一つのキーワードが、修験の精神の重要性だと思っている。桜本坊の巽ご住職にもお目にかかって、紅葉手前の吉野山をおりた。

 MIHO MUSEUMの「古陶の譜」にもやっと拝見。古陶の歴史がわかる展覧会。みたことのない器形、窯、はじめて見る国宝の常滑壺、瀬戸の小さな瓶子もよかった。夏期展から引き続き小山さんの遺愛の数々とともに見応えあった。なにより「個人の美」目線がある。ここが前出の展覧会との大きな違いのように思った。「美」は資料でもなければ歴史でもないよ、焼き物の名前なんてどうでもいいじゃないか!

 なんてこれはちょっと僕の対抗心。あまりに展示がいいので悔しいだけです。いいなー。帰り道、偶然福森さんに会う。滋賀近美にもまた行って下さった。展示替えがあったので僕も行った。あと一週間、二万人に届くか?ギリギリのようだ。

 これから名古屋へ。久しぶりに中日の知人と再会する予定だ。名倉さん、いつも有り難うございます!

 これを書いていると、TVに首相が中国の胡錦濤主席との首脳会談の映像が流れていた。なんだあれ、冒頭に撮影でメモ読んでいる首相というのははじめてみた。もうやめたらいいよ、限界限界。弱腰とかいう以前、人間の資質だね。事務官は宰相になっちゃいかんのだよ。





平成22年11月10日(水)

 稲佐浜
 

 新居浜から早起きして戻る。ダライラマ法王風邪のため大事をとり予定されていた昼食会がなくなってしまう。残念だが仕方ない。対談がはじまる控室から会場に向かう一瞬、目が合い会釈した。優しい眼差しだった。茂木さんとの対談も科学と仏教という興味深い内容。普段は温和な法王だが、夢のなかで誰かを怒鳴ることがあるのか?それは脳の意識なのか、心が先のなのか?尋ねたいと思ったが茂木さんは日本語が障害になり歯痒そうにしていたからやめといた。法王は成田から大阪、奈良の東大寺、今年二度目の来日。講演は報道がはいるわけではなく、新聞の扱いも小さい。勿論、日本政府首脳と面会せず離日する。オバマ米国大統領、フランスサルコジ大統領、英国の首相など欧米では国家首脳待遇なのに淋しい限りだ。「チベットは中国の国内問題」だそうだが、平和憲法をかかげ、人権を大事にする精神から許されることなのだろうか?

 北方領土だって露大使が「多くは露の国内問題」との説明にすぐに露に戻す。そんなくらいなら帰る必要ないんじゃないかな。結局は米国頼みだ。そろそろ覚悟を決めようよ。番犬のように顔色伺い続けるのか?軍隊を持ち国は自らの手で守るのか?僕は第三道があると思うが、隣人を励ますことができない国はどこからも信頼されない。「経済」という後ろ盾だけが生命線なのであろう。法王のユーモアあるご尊顔に、わが国の情けなさに憤るが、晩の会合で「韓国やシンガポールは、中国に気を使い法王にビザは発給しない」とのはなしを聞いた。日本はまだマシなのだという。僕はそう思わない。法王は75才であられる。

 松山空港では畏友の西村瞬が忙しい最中わざわざ見送りにくる。二つの選挙 頑張ってもらいたい。そして坂上さん往復有難うございました。茂木さんもお疲れ様。ネクタイできるんですね。ジャケットくちゃくちゃになるので、リュックから出したほうがいいですよ。そして次回はちゃんとサイズがあっているものを着るようにしましょう!!!





平成22年11月8日(月)
週刊ポストに《白洲信哉 旨し国、日本 第2回〜秋鯖と秋刀魚〜》が掲載されました(「ニッポンの神仏」は休載です)。





平成22年11月3日(水)

 出雲
 禅定寺からの山並み

 文化の日、なんと空虚な名称だろう。明治節 というのはそんなに悪いかな?昭和天皇のお誕生日は昭和の日、いつかなんのことかわからなくなるだろう。

 昨日、実りの多い旅から戻る。福井県立美術館「シルクロードと東アジアの仏教美術」。六本木のロンドンギャラリー亭主田島さんの展覧会。ほとんどかれが長年集めた「在庫」である。米原でばったり会って、そのまま会場へ行く。これはニューヨーク、これはパリ、これはロンドン…。これはかれこれ四十年あるな。一体この人はなんだろう?売れ残っている?のが嬉しいみたいだ。「これいいでしょう」「大好きなんだ」。骨董屋とは不思議な商売だ。会場は広く少し滋賀にわけて貰いたい。ガンダーラをゆっくり見過ぎて最後の日本までたどり着かなかった。本日までです。

 日曜日、11時に永源寺図書館の島田さんと近江八幡駅で出会う。想像通り、純粋で情熱的なかただった。この図書館は人口に対して一冊の貸出本数が日本一の図書館だそうで、陳列とか様々な工夫をしている。聴取も熱心だった。白洲展でお借りしている石馬寺や君が畑の古面がある歴史ある地域 その一つの中心になってこれからもがんばって貰いたい。講演で地域の地名の話をしたら、聴衆の一人から手紙を頂く。安土町のかたで市町村合併の結果、失われてしまうことを切実に書いていた。まったく同感である。「効率」というのは表向き正しいが、もうそんな一律で上から押し付ける時代じゃないだろう。多様な価値観を大切にしたいものだ。

 滋賀県立美術館にむかっていると雨が降ってきた。やっぱり池田さんの威力は大変なものだ。二人で飲んだ時、二度続けて大雨洪水警報だったことがある。約束の三時ぎりぎりに着くと駐車場へ並ぶ車の列、いったいどうしたんだろう?と思っていると、学芸課長の高梨さんとNHKの吉田さんが心配して迎えにきてくださる。整理券200もなくなって会場は立ち見で熱気帯びていた。浜松の岡田さんや伊東さんは会場に入れずメールを頂いた。

 茂木さんの宣伝のお陰か?普段より若い方が多かった。寝ているものはいない。一生懸命話した。講演終了後サインしていると、「このかたがロビーでお待ちしています」と言って名刺をみると、なんと丸弥太さんの女将さんだ!応接にご案内いただく。

 他にもお会いできなかったかたがたがたくさんいるかもしれません。また、雨の中お越しいただき、閉館まで熱心にご覧いただいたすべてのかたがたに感謝します。千宗屋若からもメールを頂いた。嬉しい。

 京都へ向かう車中、京都新聞の日比野さんから取材を受ける。近日掲載予定です。

 晩は押鐘さん主催?の夕食会。福森さん、修作さん、理策さん、金子さんに小池さん、あとで柳孝一くんと山澤が合流。楽しくも凄まじい夜だった。お陰で昨日は早々に退散。合間に正倉院展、法華寺御本尊、大津歴史博物館。きれいなものをたくさん鑑賞できて幸せだった。





平成22年11月1日(月)
週刊ポストに《[特別企画]白洲信哉 旨し国、日本 第1回〜甘鯛の塩焼きと刺身〜》が掲載されました(「ニッポンの神仏」は休載です)。





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